治療薬の投薬制限期間・・・逆流性食道炎

先日、逆流性食道炎の治療に関する講演会に出席しました。
逆流性食道炎は、その名のとおり食後に胃液が食道に逆流するために起こる病気です。
内視鏡による検査が行なわれるようになって診断が多くなっています。
成人の10人に1人(約12%)くらいに認められます。
肥満者で起こりやすいため、中年でBMI(肥満度)の増加とともに患者数も増えます。
高齢者では、背がまがり胃が食道に突出する(食道裂孔ヘルニア)ために起こりやすくなります。

症状は、胸やけです。
この病気の治療には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる薬が使用されます。
胃酸の分泌を抑える薬です。
PPIを服用すると胸やけが消失しスッキリします。

このPPIというクスリは、処方できる期間に制限があります。
逆流性食道炎では、8週間までです。
この期限を超えて処方すると医療機関は、過剰投与ということで医療費をカットされてしまいます。
毎月、医療費査定が行なわれているのですが、PPI過剰投与で医療費をカットされている医療機関は多いようです。

もちろんこれに対して医療側は不満をもっています。
8週の処方で確かに治療をしている間は症状が改善しますが、規則どおり投薬を止めると再発する方は多いからです。
体型や年齢により頻度が増す病気ですから対症療法のクスリで完治することは難しいのです。
講師の先生に「どうして長期投与が許可されないのでしょうか」という質問をしました。
講師の先生から返ってきた答えは「治療にメリハリをつける目的でしょう」ということでした。

この答えにコツンと頭を叩かれたような衝撃を受けました。
漫然と治療が行なわれている場合が確かにあります。
この点を医療者としては注意すべきだと再認識させられました。
投薬制限があることが確かに不適当な患者さんもいますが、中には短期で治る患者さんもいます。

医療側からの視点では、どの患者にも薬を使い続ければよいという発想になりがちですが、
患者さん側から見れば、使う必要ない薬を長期に使用されたらたまりません。
患者さんの状態に合わせて細やかに対応すべきだという医師として当たり前のことでしょう。

あなたが薬を服用されている場合、高血圧や糖尿病のように合併症予防や病気自体が進行することを予防する薬か対症的な薬か分けて考えていただきたいと思います。
前者の場合は、必ずきちんと服用すること。
対症的な薬の場合は、本当に必要かどうか医師に確認なされてください。

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