糖尿病は、もっともよく知られている病気です。全人口の6人に1人の割合いで、この病気の方がいます。
糖尿病になりやすいかどうかは、
①遺伝的な素因 ②肥満 ③加齢
の3因子が大きく影響します。
ここで気をつけなければならないのは、高齢者と中年の方の糖尿病は発症機序が異なるということです。若い方では、少ない病気ですから、加齢とともに多くなる病気です。
高齢者でなる糖尿病は、血糖を低下させるインスリンというホルモンの分泌量が年とともに減ってくるためです。実際、高齢者の方を診ていると徐々にヘモグロビンA1Cの値が高くなります。
これは、老化現象の一つです。
一方、中年の方の糖尿病は、インスリンの分泌が良いのにかかわらず、肥満になったためにインスリンの効きが悪くなり発病するのです。
このような状態のことをインスリン抵抗性と言います。
つい最近30~60歳代の中年の肥満男性3人と女性1人が健診でヘモグロビンA1Cが高値ということで当院を受診なされました。どの方もヘモグロビンA1Cは10%以上と血糖コントロールは極めて悪い状態でした。
糖尿病の治療には、食事療法、運動療法を基本として薬物療法があります。
これほどコントロールが悪い状態の方には、ためらわずにインスリン注射治療をお勧めします。
だれでも注射をすることは嫌なことです。
ましてや毎食時に自分で注射をするなんてとんでもないことに思うでしょう。
だけどインスリン注射をすることが大事なのです。
インスリンが効きにくくなった身体に多量のインスリンを導入することにより膵臓を休ませることができます。
インスリンを自己注する方法を学んでもらうために1週間入院していただきました。
この入院中にインスリンを自己注の方法だけでなく、栄養指導や糖尿病の知識をつけていただきます。
体重を減らすことができインスリンの効き方が改善すると、インスリンの必要量は徐々に減ってゆきました。
そしてついには、4名ともインスリンから経口薬に切り換えることができました。
とても血糖コントロールが良い状態を保つことができています。
もし最初にインスリンを導入しなかったら、ここまでコントロールができていなかったと思います。
この初期からのインスリンを導入が中年の糖尿病のゴールデンメソッドだと思います。