栄養指導、これからの役割は

栄養指導というと肥満やメタボなど生活習慣病を改善するために行うというイメージがあります。
栄養士さんは、患者さんに食事制限をすることを主に指導します。
しかし超高齢化社会になり、高齢者の低栄養状態が問題になっています。
体重が減少して全身の筋肉量が減りサルコペニアと呼ばれる状態になります。

サルコペニアになると介護が必要な状態に近づき、さらに寿命短縮につながります。
高齢者の栄養状態をなんとか改善することがこれからの栄養士さんたちの課題となるでしょう。
高齢者の体重減少の原因には食べたくても食べられない場合と食べたくない場合があります。
この2タイプを分けて対策を考える必要があります。

大きな病院では、栄養士、医師、看護師が栄養サポートチーム(NST)をつくり
原因別に入院患者さんの栄養対策をおこなっています。
このNSTのようなチーム医療を診療所の外来でもできるようにすることが必要でしょう。

自宅で過ごしている高齢者夫婦や独居老人の栄養状態を指導して改善させることを目的とします。
これまで食事制限することを主に指導してきた栄養士さんたちにとっては、食べられるようにするという真逆の指導となります。
中高年の肥満解消も難しいですが、高齢者の食欲増進はもっと指導が難しいでしょう。

私も外来で、痩せている高齢者にもっと食べてくださいと促しますが、
ほとんどの方が、自分は食べていますと言われます。
栄養士の先生方には、こうした高齢者が食べているものを実際にチェックし、具体的な食事指導をしていただきたいと希望します。

ただ栄養指導だけでは、上手くいかないことも往々にしてあるでしょう。
若い年齢と異なり高齢者では、身体生理機能が低下と様々な身体疾患を有しているからです。

例えば高齢者では、次のような機能の低下を認めます。
嗅覚の低下、視覚の低下、味覚の鈍麻、唾液の減少、歯の欠損、嚥下反射の低下、胃酸分泌の低下、腸管運動の低下などこうした老化現象すべてが食欲低下につながります。
身体疾患や加齢現象により食欲が低下しているため、健康人に対する栄養指導と同じことを行ってもおそらく効果は少ないでしょう。

老化現象なのだから高齢者に食欲増進させることは無理・無駄という考え方もあるかもしれません。
でも数多くの薬を処方するよりも食欲を増させる努力する方が良いと私は思います。
医療者として、しっかり食事をとっていただき少しでも元気で長生きしていただくようにお手伝いしたいとものです。

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