長引く咳の治療・・・遷延性咳嗽

今の時期、咳症状が長引く方が外来にくることが多いです。なかなか診断が難しい。

3週間続く咳症状で徐々に症状が治まってきている場合は、あえて抗生剤を服用する必要はないでしょう。咳止めで対症的に治療するだけ十分。
過剰な医療は、抗生剤による害や耐性を考えるとかえってよくありません。

それでも咳がとまらずに2ヶ月以上続く場合があります。
患者さんも病気を治しきらないヤブ医者と見くだりをつけて他の診療所を受診します。

当院にも、こんな患者さんがよく来院します。
他院で治療を受けたけどちっとも咳が止まらないので来ましたと訴えかけてきます。
おそらく逆パターン(当院に罹っていた患者さんが他院を受診)も頻繁に起こっていると思います。暗に何とかして欲しいというプレッシャーを感じます。

これでスッと改善させたら名医ですが、そう簡単なものではないことはこちらもよくわかっています。
重要なことは、肺がんや肺結核を一応念頭にいれて診ることだと思います。
そうでなさそうなら2ヶ月以上続く咳の場合には、次の3つの疾患を考えなければならないと説明します。

①咳喘息
②逆流性食道炎
③感染後の咳嗽

咳喘息は、アレルギー的な機序で起こります。
もともとアレルギー体質があるか、季節変動があるかを手がかりとします。
ステロイド剤を含んだ吸入薬を使用すると咳が減ることで診断がつきます。

逆流性食道炎は、小太りで背が曲がった高齢者の方に多いのが特徴です。
胸焼け症状があれば、診断の手がかりになります。
寝ている間に胃液が食道に逆流してさらに肺に入り込むことが咳の原因です。
胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方して咳が軽くなれば診断がつきます。

風邪症状の後に咳だけが続く場合があります。
感染後の咳嗽とよばれるもので意外と多いいようです。
この場合は、対症療法でみてゆけば自然と軽快してゆきます。

この3つの疾患のいずれかを考えて治療を行ないます。
医師側も、できるだけ劇的によくなったと言ってもらいたいと思い治療します。

この中で一番治療により劇的にスキッと改善するのは、咳喘息の治療です。
吸入ですぐよくなった場合は、患者さんから大変感謝されます。
ですから咳喘息の治療を優先させることが多くなります。
咳喘息と以前言われたことがある方は、次に同じことが起こった時に医師にそのことを伝えるとすぐに適切な治療をうけられます。

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